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福島写真プロジェクト 南相馬ワークショップレポート

2012年12月9日、道の駅 南相馬にて開催

主催:はま・なか・あいづ文化連携プロジェクト、福島写真プロジェクト
後援:PLACE M、南相馬市ふるさと回帰支援センター
協力:キヤノンマーケティングジャパン株式会社、道の駅 南相馬

※参加者募集のフライヤーはこちらから。

撮影:杉野 真理
 

スタッフ日記


ワークショップの開催日、2012年12月9日の日曜日は、真冬にしても強烈な寒波が押し寄せました。前日から当日朝にかけて南相馬に到着したスタッフ一同も途中の山道ではそれぞれ視界をさえぎる雪や路面凍結に遭遇。午前9時、会場である道の駅 南相馬で集合した面々には「寒いね」「大丈夫だった?」が朝の挨拶になりました。

そんな寒さにも負けず、開始時間10時をめざして準備を開始。今回のテーマ「ポートレート撮影」に合わせて、撮影用のセットを組みます。実は屋外撮影も考えていたのですが、数日前から寒波が予想されていたために、屋内にスタジオを作ることに変更。色ムラのある茶色の布は、文字通り「ムラバック」といいます。ホテルや百貨店の写真室などでよく使わるものです。窓からの自然光も活かして、ライティングもセットします。

一番に来てくださったのはTさん。夜中じゅう、小高地区のパトロールをしてからいらっしゃったとのこと。3交代制だそうです。「普通なら寝ている時間なんだけど」とおっしゃっていました。震災後にお撮りになった「奇跡の夫婦松」の写真はまさに心打たれる一枚。新聞にも紹介されたそうです。Tさんには、私たちスタッフの集合写真を撮っていただきました。

次にお見えになったのは、地元の写真クラブのメンバーの方々。代表のOさんは長いキャリアをお持ちの報道カメラマン。震災後の南相馬の写真をたくさん見せていただきました。今回参加するスタッフはいずれも報道の写真には関わっていないのですが、どのような状況でも撮ること、撮り続けることをしていらっしゃる報道カメラマンの姿勢には頭が下がりました。

そのように写真を撮ること自体には長く親しんでいらっしゃる皆さんも、今回のようにセットでポートレート撮影をする機会はなかなかないとのこと。撮って、撮られての撮影会はなごやかな雰囲気の中で進んでいきました。

今回は、その場でプリントアウトもしました。キヤノンマーケティングジャパン株式会社様がカメラ20台と合わせてプリンタ5台を無償で貸してくださったのです。A4でプリントアウトが出てくると、歓声とも、どよめきともつかない声が上がります。正面を向いた写真、視線をそらせた写真、バストアップ、全身、ちょっと腕組みしてポーズをとった写真……。おひとりの写真でもいろいろな発見があります。

隠れていた魅力が引き出されるのもうれしいこと。「こっちもいいね」「私ってこんなふうに見えるんだ」「10歳くらい若く見えないかな」と、わいわがやがや。ポートレート撮影って、撮るのも、撮られるのも本当に楽しいですよね。「自分が気に入っている自分の写真があるっていいものですね」の声に皆さん、大きくうなずいていらっしゃいました。

さて、参加者同士でお互いに撮影した後は、道の駅にいらっしゃった皆さんに声をかけて写真を撮らせていただくことに。おいしい食堂があり、ここでなければ買えないおみやげものが豊富に揃っている道の駅 南相馬にはたくさんの方がいらっしゃいます。でも、さすがに参加者の皆さんは「知らない人に『写真を撮らせてください』と声をかけるのはちょっと……」ということで、ここからはスタッフが頑張ります。福島県立博物館から来てくださったおふたりにもおおいに助けていただきました。時には怪しまれながらも、ちょっとでも脈がありそうなら「是非!」 その後はちらちらとホールをのぞいていく方も増え、一時はセット前で順番を待っていただくほどになりました。

プリントアウトした写真はお持ち帰りいただきます。「いい記念になった」「一緒の写真なんて、なかなかないからね」と皆さんに喜んでいただいて、スタッフもうれしいかぎり。なかには、おひとりでお撮りになった後で、ご家族を呼んでくださる方もいらっしゃいました。

撮影の前後にはいろいろなお話をうかがうことができました。おばあさま、おかあさまとご一緒の若い男性は、奥さまとお子さまは県外に避難していらっしゃって、いまは別々にお暮らしとのこと。ご自身も震災後、まったく違う仕事につかれたとのことでした。「それでもずっとここで生まれ育ったので」のお言葉には、故郷を思うお気持ちがあふれていました。

歯科技工士の方は、震災後、お仕事が増えてとても忙しかったと話してくださいました。生活が変わって、心身の疲れが歯に出る方がとても多かったそうです。入れ歯を流された方も多かったとのことでした。お嬢さまのご一家と一時は一緒に避難したものの、ご自宅に残してきたペットが気になって戻ってきたというご夫婦もいらっしゃいました。その後は、近所に残された猫も引き取っている間に、いまでは犬が2匹、猫が9匹いるそうです。

会場で古くからのお知り合いが久しぶりに再会したという劇的な場面もありました。「あれ、○○ちゃんじゃないかい?」 「あら!」おふたりとも90歳前後です。しばらくはなつかしいお話に花が咲いていました。

このように地元も方のお話をうかがうと、私自身は福島の写真を撮ることの畏れ多さをあらためて知ります。写真は「切り取る」と言いますが、圧倒的な事実を前にして、自分は何を切り取るのか、切り取っていいのか、切り取らなかったところまで広がりがある写真が撮れるのか、私は延々と自問自答を繰り返します。福島を撮るということは、私にとっては、葛藤の連続です。

午後2時頃になるとむしろ気温が下がり、綿を手でちぎったような雪が降り始めました。温暖な南相馬で雪はめったに降らないとのことで、地元の皆さんも早い雪に少し驚いていらっしゃいました。

それでも、地元の方のおすすめで「凍天(しみてん)」をいただいたスタッフはおなかからあたたまった気分。ヨモギ色のお餅をドーナツ生地でくるんで揚げた凍天はボリュームもあって、いかにも力が出そうな感じです。お話をうかがうと、凍天が看板商品の会社は本社工場が原子力発電所から20km圏内にあり、現在は実店舗で可能なかぎりの製造販売をしながら、本社移転を進められているとのこと。道の駅での販売も11月に再開したばかりとのことでした。

終了時刻が近づいてきました。寒いせいか、にぎやかだった道の駅も、人の姿はだんだんまばらになってきた様子。今回のワークショップ開催にあたって、お世話になった道の駅の皆さん、南相馬市ふるさと回帰支援センターの皆さんの写真も撮らせていただいて、私たちもそろそろ片付けを始めることにしました。

後から数えてみると、ポートレート撮影のモデルになってくださったのは40組以上。皆さんのお写真は2月18日から3月2日、南相馬市の銘醸館で開催される「Reflection: 9人の視点 ver.2」の中で私たちの写真と合わせて紹介させていただきます。撮る楽しさ、撮られる楽しさを少しでもお伝えできていたら、私たちにとってそれほどうれしいことはありません。皆さん、ほんとうにありがとうございました。

 
文責:Uma Kinoshita